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氷の華~恋は駆け落ちから始まって~
第2章 蓮野に降る雪
 懇願するように言っても、トンジュはまともに取り合おうとしない。
「何度も同じ台詞を言わせないでくれませんか。俺はあなたをもう誰にも渡すつもりはない、サヨンさま」
 〝サヨンさま〟と、トンジュはわざと彼女の名前をゆっくりと引き延ばすように発音した。
 何故なのか、この男に名を呼ばれると、サヨンの奥深くに眠る何かが烈しくざわめくようであった。
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