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氷の華~恋は駆け落ちから始まって~
第3章 幻の村
 泣きじゃくるトンジュの小さな手には、大行首さまから頂いた大切な書物が握りしめられていた。それは子ども向けのハングル語初心者用教本であった。頂いてからひと月を経ない中に、その薄い本は幾度も読み返され、自分で書き足した跡や大行首さまから聞いた大切なことが走り書きで記されていた。
 その大切な本をあろうことか、年上の下男に取り上げられ、何枚かを破られてしまったのだ。トンジュは哀しいことがあった時、井戸端でよくひっそりと泣いた。ここならば、人眼につかず、泣きたいだけ泣けるからだ。
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