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氷の華~恋は駆け落ちから始まって~
第5章 彷徨(さまよ)う二つの心
 ただ、夢を見たことだけは鮮明に憶えていた。奇妙なことに、確かに夢を見たのは判っているのに、肝心の具体的な内容を記憶していないのだ。それが何を暗示するのか判らずに見た夢である。
 眠りながら、サヨンは泣いていた。何か哀しい夢を見たのだろうか。
 一夜眠ったにしては、身体が重い。大抵、まだ若い肉体はどれほど疲れていたとしても、一晩ぐっすりと眠れば、翌朝には嘘のように疲れが取れているものだ。
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