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氷の華~恋は駆け落ちから始まって~
第5章 彷徨(さまよ)う二つの心
 その日、サヨンが山を下りたのは、麓の川で髪を洗うためだった。池で髪を洗っても良かったのだけれど、より澄んだきれいな水で洗いたかったのだ。
 トンジュはサヨンがいつも麓に行くことを渋ったが、どうしてもと頼むと、渋々許してくれた。彼はサヨンには黙っていたが、サヨンをいつも不憫に思っていたのだ。漢陽でコ商団のお嬢さまとして暮らしていた頃は、何不自由ない贅沢な暮らしを送っていたサヨンである。
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