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氷の華~恋は駆け落ちから始まって~
第5章 彷徨(さまよ)う二つの心
 サヨンが真っすぐに向かったのは履き物屋だった。今日の昼間に目抜き通りを通ったゆえ、履き物屋の場所はちゃんと憶えている。この店は露店ではなく、小さいながらも、ちゃんと店舗を構えた店だ。
 当然ながら、真夜中なので戸は固く閉ざされている。サヨンは夢中で戸をたたいた。ほどなく眠そうな顔をした主人らしき男が扉を細く開けた。
「何だァ? こんな夜中に」
 いかにも不機嫌そうな主人に、サヨンはまず真夜中に押しかけた非礼を詫びた。
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