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氷の華~恋は駆け落ちから始まって~
第2章 蓮野に降る雪
屋敷を出る間際のやりとりを思い出すにつけ、トンジュが相当の切れ者だと改めて思わずにはいられない。屋敷で見せていた穏やかで寡黙な若者といった印象とは全く異なる面を持っている―、それだけは事実のようであった。
全く知らない別人といるような気がして、サヨンは知らず恐怖が背筋を這い上ってくるような想いに囚われた。不思議なもので、そう思って見ていると、先を行くトンジュの背中が見知らぬ怖い男のもののように思えてならなかった。