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氷の華~恋は駆け落ちから始まって~
第2章 蓮野に降る雪
いっそのこと、このまま逃げれば。
サヨンの脳裏をそんな想いがかすめた。
むろん、今更おめおめと屋敷に戻れるはずもないし、そのつもりはないけれど、この男とこのままずっと一緒にいるのは良くないような気がしたのだ。
トンジュにはどこか得体の知れないところがある。静まり返った沼が淀み、底が知れないように、腹の底が全く見えない。この男の手に一度絡め取られてしまえば、沼底まで沈み込み永遠に浮き上がれないような予感さえしてくる。