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とあるオクサマのニチジョウ
第9章 小麦色と白いオクサマ
 
…やっぱり…帰って来なかった………


 後ろ手に玄関の扉を閉める。

 振り返って扉の隙間から見える暗い空間。

 『忙しくて会社に泊まり込む』という素っ気ないメールを送られたのは数日前。

 今までにも泊まり込みはあったものの、今の恭子は正行の言葉を鵜呑みに出来なかった。


…きっと…会社なんかじゃなくて………


 家に電話を掛けてきた、見ず知らずの若い女の影。

 どんな女か分からずとも、正行がだらしない顔で一緒に居ると思うと表情が曇る。


…でも…もう……私も………


 鍵を掛けて歩き出す。

 向かう先はいつもの喫茶店。

 均整の取れた体を、薄手のキャミソールとマイクロミニのスカートだけの姿。

 若いとは言え、人妻らしからぬ煽情的な服装。

 白い肌を存分に晒し、深い胸の谷間も肉付きの良い太腿も露わにする。

 そんな薄着の下は、当然のように下着は無かった。

 人気を気にしながら鼓動を早め、喫茶店へ向かいながら体を火照らせる。

 視界の片隅に、薄いキャミソールの生地を持ち上げていく乳首に固さを感じれば、自然と吐き出す息が熱さを帯びていく。


…後戻り…出来ない………


 トイレでマスターに背後からいきなり襲われたあの日。

 口では抵抗したものの、やはり快楽に溺れて絶頂まで上り詰めた。

 マスターの妻の顔も正行の顔も浮かばなかった。

 マスターに襲われたから仕方ないと自らを正当化して、マスターが与えてくる快感によがり乱れたのだった。


…きっと……今日も………
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