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とあるオクサマのニチジョウ
第10章 決意のオクサマ
 
「……………」

 バタンと扉が閉まる。

 ノーブラの上に黒いキャミソール、黒いTバックショーツだけという姿の恭子。

 肉感的で見事なプロポーションに煽情的な恰好。

 存分に男の肉欲を駆り立てる姿でありながら、正行は足早に部屋を出ていく。

 何かを思い出して緩む表情を、気難しい表情で取り繕っている事に気付いている恭子。

 二人の間には会話という物は減っていた。


―――――――――


 恭子は抱き合っていた場面を見ても、問い質す事はしなかった。

 何食わぬ顔で帰宅した正行に、笑顔で声を掛けたくらいだった。

 戸惑いを見せた正行だったが、それも一瞬の事。

 スーツを脱ぎ取り、脱衣所へと姿を消す。

 脱ぎ捨てられたスーツを拾い、ハンガーへと掛ける。

 結婚してから続く行動。

 何の気無しに鼻に近付けた正行のスーツ。

 衿元から微かに匂う甘い香り。

 明らかに恭子とは違う異性の香り。

「……ふふっ……」

 スーツを掴む手にギュッと力が入った。

 ショーツの股布が、ワレメから溢れ出す液体で汚れていた。


―――――――――


 無言で出て行った夫を無言で見送った恭子。

「さぁて………」

 気合いを入れる言葉を吐き出すと、いそいそと家事に勤しむのだった。


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