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とあるオクサマのニチジョウ
第10章 決意のオクサマ
 
「あれ? 珍しいね」

 カウンターの中に居る恭子に、怪訝そうに声を掛けるカウンター席の常連客。

「え、えぇ…まぁ……」

 苦笑を浮かべながら歯切れ悪く言葉を返した恭子に、常連客は更に怪訝な面持ちになる。

「いやぁ……そろそろ恭子さんにも給仕だけじゃなく、ある程度料理もと思いましてねぇ」

 俯き気味に顔を伏せながら手を動かす恭子に代わって、隣に立ったマスターが言葉を吐き出した。

「それに今……こんな状態なんで………」

 言葉を続けて下ろしたマスターの視線の先には、首から下げた布に固定された左腕。

「あぁ…。骨折…だっけ?」

「いやぁ、転んだだけで折れるとは、歳には勝てませんよ」

 苦笑を浮かべるマスターに、常連客は一言労る言葉を吐き出すと、再び視線を恭子へと向けた。

「んじゃあ、しっかりやらないとね」

「は、はいぃ。…んぁっ……」

 返事をしたものの、恭子は顔を上げる事も無く、剰え、微かに短く声を洩らした。

 不自然さを漂わせている恭子に、首を傾げる常連客。

「恭子さんも…何処か調子悪いのかい?」

「あ、いえ……私はぁ…んんっ……大丈夫ですぅ」

 僅かに顔を紅潮させて苦笑を浮かべる恭子。

 時折、軽く柳眉を寄せて顔を顰める表情を見せる。

「そ、そお。だったら良いけど………」

 苦笑を浮かべながらも恭子の言葉を受け入れた常連客は、手元の新聞へと視線を戻した。


…もぅ……マスターったらぁ………


 カウンターの中で手元を見遣りながら、尻をモジモジとくねらせていた恭子。

 短くスカートの裾はウエストに差し込まれ、白く丸い尻を露わにされていた。
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