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とあるオクサマのニチジョウ
第6章 朦朧オクサマ
「やっぱ…寝てるよなぁ……」
ガチャッと玄関の鍵を開ければ、明かりの点いていない薄暗い部屋。
「途中で引き返したから、驚かせようとしたけど失敗だったか……」
杏子の同居人である正俊は苦笑を浮かべながらも、勝手知ったる我が家だけに、暗がりの中を進んでいく。
…杏子とは違う靴があったから……
…キョウちゃん…来てるんだろうな……
正俊が帰れない時に、隣から恭子が泊まりに来ているのは知らされていた。
…しかし…今朝のキョウちゃん………
…あれは…ホントに………
「って、くさっ………酒くさっ!」
再び、朝の情景を思い出して、にへらとだらし無い表情を見せた正俊。
しかし、リビングに足を踏み入れた瞬間、鼻を突く酒の臭いに顔を顰めた。
「杏子はあんま飲めないの分かってるから……。やっぱり……」
酒癖があまり良くない恭子を思い浮かべる。
花見の時に酔った恭子に、樹から吊された。
軽い登山の時に、山の斜面を滑らされた。
酒を呑んだ恭子に良い思い出の無い正俊が、表情を歪めるのも無理は無かった。
「…はぁ……さっさと寝るか………」
頭を振って嫌な思い出を振り払った正俊は、何の躊躇いも無く寝室の引き戸を開けた。