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とあるオクサマのニチジョウ
第6章 朦朧オクサマ
 
 スーツとワイシャツを脱ぎ捨て、ボクサーパンツ一枚の姿で寝室に入るとリビングと同じように、酒の臭いが鼻を突いた。

「どれだけ呑んだんだ…キョウちゃん………」

 暗闇の中で目を凝らせば、漸く暗がりに目が慣れる。

 それでも、二組の布団に寝転ぶ二人の姿がボンヤリと見えるだけ。

「…すぅ…すぅ……」

「…むにゃ……んぅ………」

 二人分の寝息と寝言を耳にして、正俊は苦笑を浮かべる。


…あれだけ呑めば…グッスリだよなぁ……
…杏子も下戸なのに…よく付き合うよ………


 いつもは自分が寝ている場所から、手前の杏子の布団を見詰める。

 ボンヤリと見える杏子を労いながら、杏子の布団へとゆっくりと足を進めた。

 恭子と一緒に寝る訳にはいかず、正俊の行動は至極当然だった。

「…んぅ……」

「…むにゃ……」

 二人の寝言を頼りに距離感を掴み、誤って踏み付けないように進む。


…しかし…この部屋……


 酒の臭いの他に、違う匂いが漂っている。

 いつもなら、杏子一人だけの女の匂い。

 たかだか、恭子一人が増えただけなのに、何故か正俊は女の匂いが強くなっている事を感じていた。

「何か…ヤバいな……」

 思わず呟く正俊。

 杏子と恭子の混ざり合う体臭を意識し始めると、気分の昂りを覚えてくる。

「昨日…あれだけヤったってのに………」

 まだまだ精力旺盛な自分に、思わず苦笑する。


…取り敢えず…キョウちゃんも居るんだし……
…寝ちまえば…なん…と…か………

 昂る感情を抑え込もうとした時だった。

「…ん……んぅ………」

 杏子の布団からの寝言。

 それと同時に寝返りを打ったその姿に、正俊は無理矢理思考を止められた。
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