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くちなし
第2章 香
きっとお嬢様も何か勘違いしているに違いない。

「ふっ……っん!」
優しく身体を触る。まるで壊れ物に触るように。
「っ………はっ…ん!」
この白い肌も、赤い唇も、香りも今だけは、俺のものだと考えるだけで、狂ってしまいそうだ。

「雅…。……きっとこれは、幻かもしれない。
 君と僕は、交わってはいけない。
 平行線を保たなければいけないのに…。」
「黒田…。そんな悲しい顔をしないで。
 今日だけ…黒田を感じればいいの…。」
俺は、雅の身体を犯してしまうのか。

「やはり…意気地なしですが…傷つけることは…。」
使用人と1人の男が交互に入れ替わるような感覚になる。

「黒田。これは、私からの命令よ。抱いて。」
「……っ。」
私も必死なのだろう。
この香りのせいで、学校でも処女を奪われそうになる。
好きでもない人とするより、初めては好きな人と…私を知っている人としたい。
今くらいは、この香りを利用してやるわ。
黒田のネクタイをとろうとする。
「……。黒田…ネクタイってどうやってとるの…?」
「クスクス。ネクタイは、こうやってとるのですよ。」
ーしゅる…ー
「後で、ネクタイの結び方も教えて。」
「かしこまりました。」
俺は、決めた。使用人はお嬢様の要望を受け入れる。
自分自身そう納得させる。お嬢様の意思にそぐわないかもしれないが、それでいい。
主導権は、お嬢様にあるのだ。

「どうして頂きたいですか?」
「んもう…黒田。わかっているのに、どうして意地悪するのかしら…。」
「クスクス…聞いておかなければなりませんので。」
ーちゅっー
「ん……。」
お嬢様の舌を絡ませ、いやらしい音がする。
「……は…んんっ…」
唇を離し顔を見つめる。
「…息ができないかと…思ったわ。」
「クスクス…鼻でしたらいいのですよ。」
お嬢様の洋服に手をかける。
「あ…。」
「ん?どうされましたか?」
「少し…恥ずかしいわ…。」
「恥ずかしがることはございませんよ。私は、全て受け入れます。」
「黒田に触れられると…身体が熱いわ…。頭まで、ボーッとするし…。」
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