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くちなし
第5章 交
大学の長い夏休みに入った。

親友のひかると旅行をしようと計画を立てていた。

「雅ー!やっぱり、京都がいいなぁ!
 風情があるじゃない!街並みも!」

はしゃぎながら話す彼女はとても可愛い。

「ふふ!ひかるってば可愛いー!
 京都にしましょ!」

「そうこなくちゃ!あのね…実は…。
 私のお母様の知り合いのお宅が空いてて…そこのお店のアルバイトしてくれたら、宿泊費がタダになるの!」

「アルバイト…?私に出来るかしら…?」

少し不安になる。

「大丈夫!詳しいことは、行ってから!」

「ええ!!?」

一週間程の旅行に心が躍る。
兄はどんな、心配な顔をするのだろう。
そんなことを考えてしまった。

お母様に旅行の相談をもちかける。

「あら!いいわね!私も行きたいわぁ…。
 雅、アルバイトも経験のうちよ!自分でお金を稼ぐってどれだけ大変なことか。ひかるさんも一緒なら心配ないわね!お父様にも言ってあげて?喜ぶわ!」

意外にもあっさり許しが出た。

「雅…。アルバイトなんて…。私は…将来嫌でも働かなくてはいけないんだ…。今は、遊んで暮らせるのだから…。」

首を縦に振らない父へ母が言う。

「あら?この子を本当の箱入り娘にするおつもり?
 あなたまだ男尊女卑の時代なの?時代は、変化しているのよ!この子が社会人になったとき、恥をかかせるおつもり?」

「それは…。………雅。くれぐれも気を付けなさい。」

母が父の背中を押し、旅行の許可がでた。

私は、早くひかるに連絡するために廊下で連絡をしようとしていた。

ーぎゅー

「しー…。大きな声出さないで。」

兄の柔らかい声。

「お兄様!」

「静かに。聞こえしまうよ?クスっ
 旅行へ行くんだってね?楽しんでおいで。」

兄もあっさりと楽しんでこいと言う。
私は、少し引き止めてくれるのではと思っていたので、がっかりした。

「あまり、羽目を外すんではないよ…?…ちゅ…」
首筋にキスをされる。
兄は、部屋へ戻って行ってしまった。
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