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くちなし
第5章 交
ーちゅ…ちゅっー

耳の裏から首筋にキスをされる。

「雅ちゃん…男に甘い言葉かけちゃいけない。
 後悔するよ?その優しさを利用しようとするから…。」

「ん…。昴くんも…?」

「ふふ!そうかもしれない…ね?……んん…はぁ。」

「昴くん…?」

「マーキングだよぉ!この旅行中に、他の男に手出されないようにね!特に晃とか危険!」

「ちょっと!酷い!こんな見えるところに!」

さっきの悲しい目はもう笑っている。
少しでも笑って居られるなら、昴の為になるだろうか。
私の思い込みかもしれない。けれど、つらそうな顔をしている彼を見ているのは辛い。
存在しちゃいけない。彼はどうしてそう思ったのか。
私が香り始めた頃、そんなことを思った時もあった。
自分の存在を認められないことは、本当に辛いだろう。

「昴くん。もう寝ようっか?」
「ん。そうだね。隣で寝てくれるのぉ?」
「うん。一緒にいるって約束したもん。…それとさっきは打ったりしてごめんなさい。」
「んー。いいよ。そんなんだから、うちの親父にも食ってかかるんだね?ふふー!」

真っ暗な部屋で隣に並ぶ二人。

「ね。もっと近づいていーい?」
「ん?どうしたの?」
「雅ちゃんの体温感じたい…。」

ーふわー

「す、昴くん!」
「んー?」
「な、なにするの?」
「眠れないから、さっきの続きだよぉ?」
「寝ないと明日アルバイトだよ?!」
「若いからへーき!ね…雅ちゃん…キスしよ?」

また、強引な昴がチラつく。

ーちゅ…ちゅく…ちゅっー

「すば……んん!…ん…っ。」
「んっ。……は………んん。」

濃厚な口づけに、抵抗できなるなる。
身体が溶けそう。

「雅ちゃん…こんなに人を求めることないかも…。
 すっごく雅ちゃんが欲しい。僕…どうかしてる…。
 許して…。」
「昴くん。…ごめんなさい。私の香り感じる?」
「うーん。少し。」
「その香りのせいだから…。本当に汚らわしい香りなの…。 人を変えてしまう…。だから…ごめんなさい…。」
「……雅ちゃん?僕こそ、ごめんね。大丈夫?
 その香りのせいじゃない。雅ちゃんを抱きしめて寝ていいかな…?」
「うん…。」
「大丈夫。何もしないよ?香りに惑わされたりしない。
 …おやすみ。」
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