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目が覚めたら。
第5章 変態王子が暴走しました。
 




 寝たきり患者に対するような甲斐甲斐しい介護と食事の後、狂ったようにデートデートと言い張るナツ。苦笑する担当医からの許可を取り付け、ナツは鼻歌を歌いながらとてもご機嫌だ。


 わかりやすいなぁ、ナツは。

 あたしがハル兄としてしまったことは、ナツにはまだ傷となっているのかも知れない。

 ストーカー人生を送り続ける図太い神経を持つ割には、意外にその心は繊細なことは、昔から変わっていないらしい。


 ナツ不在の緊急処置的なものとしてハル兄が駆り出される羽目になったということを頭で納得していても、その緊急時に備え、自らが許容したその職務内での処置であったことにしても、心は複雑なのだろうか。


 ナツとハル兄――。

 見た目はまるで正反対だったが、昔から仲が良い兄弟だった。

 昔からナツはハル兄に可愛がられ、ナツもハル兄を慕っていた。

 17歳の年の差。つまり親子でもいい年の差で。

 
 ナツはなんでそんなハル兄をライバル視するのか。

 仲が良いならわかるじゃないか。

 ハル兄にとってあたしは、昔から女にもなりえないということに。

 今回だって栄養切れとオットセイが現れねば、そしてハル兄が酒を買い込んでこなければ、あたしはあそこまで強く激しくハル兄を求めたりしなかった。そしてハル兄も、同情して処置はしなかっただろう。


 うっすらながらも覚えている。

 ハル兄はナツの名前を出していた。

 ナツを育てて、自分とは違う愛あるセックスをして貰えと言っていた。

 
 ハル兄はあたしを愛で抱いたわけではなく、ナツを裏切る訳がない。

 仕方なく緊急要請に応えただけだ。


 
 ナツを推すハル兄は、あたしを好きなわけではない。


 ……ないんだ……よ?

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