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目が覚めたら。
第5章 変態王子が暴走しました。
「とにかく、しーちゃん。お顔洗っておいで。そしてご飯にしよう?」
そう諭されて、ぐったり気分のあたしがベットから立ち上がろうとしたのだが、へなへなとその場で座り込む。足腰に力が入らず……立てない。
理由はひとつ。
ハル兄が激しすぎたせいだろう。
「いやだなぁ、そんなになるまで波瑠兄と頑張ったの? ふふふ、羨ましいなぁ。しーちゃん、僕が洗面器にお湯入れて持って来てあげる。お食事も僕が運んであげる。だから、力戻るまで安静にしてて? 立てるようになったら、しーちゃんデートしよ?」
うふふとナツは笑って滔々と喋りまくるけれど、その顔は泣き出しそうで。美眉が下がりきっている。
「波瑠兄、そのタバコちょうだい?」
ハル兄が吸っていたタバコを奪い取ると、それを口に含んで煙を吐いた。
ナツが……タバコ、吸ってる?
軽いショックに言葉が出ずに固まるあたしに、ナツは流し目を寄越す。
「しーちゃん。僕も……波瑠兄みたいに、どきってくる?」
「え……?」
「なぁんてね。じゃあ、待っててね」
慣れた手つきでタバコをふかしながら、洗面道具を持ってナツは退室する。
「ナツ、タバコ吸えるんだ?」
ナツがいなくなった病室で、ため息を先についたのはハル兄。
「あいつは……どうしようもないストレスを抱えるとタバコを吸う。お前が眠っていた12年間、あいつはヘビースモーカーだったぞ、俺より」
「ハル兄より……!?」
だからゲホゲホとしなかったのか。
あんなに爽やか王子様なのに。
「ハル兄……ナツには隠さなかったんだね、その……昨日のこと」
「ああ。情報は開示するのが俺達の取り決めだ。お前がナツの質問に潔く、俺とのことを割り切った答えを出したからよかったが、お前が下手にどもったりしたら、ナツは邪推してキレたかもしんねぇ」
「邪推?」
「そこにお前の愛があったのかとな。あいつが俺の前でお前に盛るのは……俺への牽制もある。お前は自分のものだと、俺にアピールしているつもりだ」
「なんでまた、そんな思い違いを」
「……思い違い、か」
「え? なんか言った、ハル兄?」
「いや……なんでもねぇ」
ハル兄とまたこうして普通に会話できることに安堵するあたしは、ハル兄の翳った顔に気づかなかった。