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目が覚めたら。
第5章 変態王子が暴走しました。
「ナツ。これがお前のお姫様なんだろう? 連れてくるなら、首輪でもつけておけ。俺が偶然通りかかったからよかったが、そうでなければこの棟半壊してたぞ?」
「悪かった。それにありがとう、止めてくれて。僕……教務課で書類書いてたら、途中でいなくなったのわからずにいたんだ」
あたしの親友の弟。
今は、ナツの親友か。
ナツの表情は柔らかいから、間違いないのだろう。
しかしナツも、なんでこんな男と親友なんぞ……。
いや、その姉と親友なあたしが言うことでもないかもしれないけれど。
「今度、うちに遊びに来て下さい。行かず後家の姉も喜びますので。……ああ、アナタもそうでしたね、失礼」
カチン。
「しーちゃんは、僕がいるからいいの。ほらほら、お前バイトだろう? 行った行ったっ!」
「ああ。じゃあまたな、ナツ」
「ん、またね」
いい男同士の交流は見ていても気持ちはいいけれど、アイツの含み笑いが無性に腹が立つ。言いたいことを言えと言いたいけれど、口に出したら容赦なくとんでもない辛辣な毒の矢が飛んできそうだ。
ユリも12年かけても、弟を調教できなかったか。
今度連絡してみよう。
「ごめんね、しーちゃん。僕、出ないといけない授業があるから、一緒に付き合ってくれる?」
「いいよ。大学の授業なんて愉しみ」
勉強嫌いなあたしにも好奇心というものは旺盛で。
固まったままの、自称ナツのお友達を放置してあたし達はにこやかに、講堂だとかいう大きな教室に向かった。
「……僕を何度もトリコにするしーちゃんが悪いんだ。だから……いいよね? ふふふ、内緒でイケナイコト……愉しみ」
そんな怪しい独り言に気づくことなく。