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目が覚めたら。
第5章 変態王子が暴走しました。
講堂のドアを開けて入れば、奥のマイクが見える壇上に向けて、横一列に拡がる机と椅子が、段々と下がっていくような放射状の造りだ。
収容人数は、恐らく何百人単位なんだろうが、幾分参加生徒が少ない。
ぱらぱらである。
大学生と言うからには、壇上近くに生徒が座って熱心に講義を聴くものだというイメージが強かったあたしは、前段になればなるほど空いている席に苦笑する。
大学でも高校でも、皆考えることは同じなのか。
ナツは後ろから二番目の端の席にあたしを誘い、ナツが端に座る。
不思議と後ろもぱらぱらで、中央列付近がやけに人が居る印象がある。
もっとのびのびと座って授業を受ければいいのに。
「いつもこんな端なの?」
「ううん、いつも前の真ん中。今日はここの気分なんだ」
今日の気分はなぜこの席なのかわからぬまま、先輩格のナツに従い席に座る。
やがてドアから小柄のおじいちゃん教授がよぼよぼやってきて、階段に途中躓きながらなんとか壇に上がれたようだ。
「こんにちは~。経済学のお話、始めます~」
よぼよぼとした声を、マイクを使って最大限の拡声ボリューム。
結構キーンと聞こえる中、その内容と言うよりは、合間に時折聞こえる苦しげな喘鳴や、ふがふがと入れ歯が外れそうな音の方が気になってしまう。
大丈夫だろうか、あの先生。
ナツの分厚く大きな教科書を見せて貰ったら、女子高生時代の記憶をちょっぴり刺激するような、カタカナ名前の外人さんが、難しい漢字の説明をつれて登場している。
確かに受講生徒は少ないかもしれない。
……ごめんナツ、あたし居眠り決定だわ。
そう思うあたしの隣で、一心不乱にノートに書き込んでいるナツ。
まだ黒板にはなにも書かれていないのに、なにをしているのだろうか。
「よし、できた。しーちゃん、これ選んで」
見せられたのは複雑怪奇なあみだくじ。
なんであみだくじ?
5つのアミダの塊がある。
言われるがまま、まず最初に選ぶと3と出た。
「……ちぇっ。3つか」
なにが3つかわからないまま、残り4ブロックのあみだくじから、1~3までの数字を打って選ばせられた。