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目が覚めたら。
第5章 変態王子が暴走しました。
 

 弧を描いた口元で、半ばうっとりとした顔で見ているナツが憎たらしくて、あたしは噛みつくようにナツにキスをした。


 すると、彼の顔が……さらに陶酔しきったような甘やかな顔になる。

 それでもリズミカルな動きを見せる胸への刺激は変わらず、蕾を指でカリカリと引っかくような意地悪さも消えない。


 声が出そうになるのを抑えるために、あたしはナツに深く口づける羽目になる。そうしないと、なにを口走るかわからないんだ。

 しかし声を殺すためだとはいえ、キスを深めれば深めるほど、体に走る痺れは大きくなっていく。それをわかっているかのようにより強くナツの舌が与える本格的な刺激に、あたしは生理的な涙を流して、服の上からナツの手を止めようと押さえつける。


「可愛いな……しーちゃん。もう、本当にたまんない……」


 口を外したナツは切なそうに呟きながら、胸を抑えるあたしの手の指の間を舌でなぞる。驚いたあたしのガードが緩んだ隙に、ナツはあたしの手を剥ぎ取ってしまい、身をさらに屈めて、


「もう、本当……たまらなすぎる」


 一番上のスナップを外して、前宛てを斜めに垂れ下げると、見えてしまったあたしの左胸に吸い付いてきた。


 一瞬、なにが起きたのかあたしはわからなかった。

 だけど目の前にはミルクティー色の髪。


 そして、奴はやってのけた。




 ちぅぅぅぅぅぅぅ。


「ぁぁああああんっ」



 完全に音と喘ぎ声が響き渡ってしまった講堂内。

 しかもあまりにも強烈な刺激に、あたしは教科書から頭を出しながら仰け反り、淫らな顔を披露していた。


 はっきりとわかる。教室の空気が変わったことが。


 ……ざわめきが聞こえてくる。


 やばい、やばい、やばいっ!


 色惚けしていた頭に、理性が急速度で戻ってくる。

 失っていくのは全身の血の気。


 人間は性経験がない処女であろうと童貞であろうと、性交時の音については無意識にそれがどんな時になされるものかを感づいてしまう、おかしな習性がある。

 絶対この室内、全員が気づいたはずだ。

 授業中堂々といかがわしいことをしている変態がいると。

 そしておじいちゃん先生は、ショックのあまりにぶっ倒れて即昇天してしまうかもしれない。

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