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目が覚めたら。
第5章 変態王子が暴走しました。
極度の大パニックに陥り、慌てふためき顔を上げられずにいるあたしの横で、ナツはあたしに小声で囁いた。
「大丈夫だよ、しーちゃん。僕がしーちゃんを守ってあげるから。だからしーちゃんは安心して、そこでずっと顔を上げずにいてね」
ナツ……。
その頼もしい言葉に、あたしがほろりとした時――。
ナツは凜とした声で言ったのだ。
「教授。紛らわしい音をたてたのは僕です」
……ナツ。
その清々しいまでの潔さは見惚れるよ。
だけど、それを今披露させないといけないことか!?
時と場合を、普通考えないか!?
なぜに注目を浴びさせるっ!!
怒りに昂奮するあまり……入れ歯がかぽかぽ外れそうになっているお茶目な音をマイクを通して響かせながら、ドスドスと、よぼよぼらしからぬ見事な足捌きで階段を上がってくる先生。
その行き着く先に居て、周囲から痛いほどの視線を浴びているのは、胸をはだけさせてノーパン姿の卑猥な恰好しているあたし。
絶対顔を上げられない。
上げたら最期、公開処刑間違いなし。
来るな、来るな、来るんじゃないっ!!
だが――。
「君かね!? はしたない"ちぅぅぅぅぅぅ"をしたのは」
ああ先生、そんな近くから"ちぅぅぅぅ"を真似しなくていいから。
あたしが言うのもなんだけれど、この音の響きはかなり恥ずかしい。
マイクで大きくなれば、さらに恥ずかしくてたまらない。
「……まぎらわしい音をたててしまい、申し訳ありません篠田教授」
いつものほやほや~とした甘ったるい声音はどこへやら。クールに徹しているような王子様には、"変態"とは縁遠く思える。
まさか変態の称号をあたしをひとりに押しつけ、あの友達のクソメガネのように、自分は理知的正統派ですからと逃れようとしているのではないな!?
……ナツはそんな子ではないと、信じたい。
「実は授業中、この隣に居る……僕の可愛すぎる彼女の血止めをしていまして。可愛すぎる彼女が負傷していた手から、血が止まらなくなって……今こうして貧血状態にまでなってしまっているんですが」
……はい?
さりげなく"可愛すぎる彼女"と強調させることは無視しておいて、ナツはあたしを怪我人に仕立てあげた。
だけどそれが通用するか?