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目が覚めたら。
第7章 鬼畜帝王が暴走しました。
 
 繋がっていく12年。

 無駄な空白だったわけじゃない。


 きちんとあたしの心を受け継いで、皆が頑張ってくれていたんだ。

 リレーのように。

 きちんと、あたしのところに廻ってこれるように。


 あたしは必ず目覚めると、誰もが信じてくれていたからこそ。


 優しいナツの旋律から、あたしは皆に愛されて守られていたことを改めて知った。

 ショパンのエチュードは、技巧的に動く指先が必要だ。どれだけナツは練習したのだろう。


「ここだけの話、あの子……つっかえつっかえだったあの曲を、ある時期から突然上手に弾きこなせるようになったの。不思議よね、夜とかよく出かけてたんだけど……別の場所で練習していたのかしら。本当に奈都って謎めいた子」


 夜のお出かけ。

 ……あたしは、ぴんときた。


 ナツの手淫がやたら上手いのは、ピアノせいか。それとも"その修行"のおかげでピアノが上手くなったのか、どちらが先かはわからないが、おそらくそれが無関係では無いはずだ。


 ……恐るべし、変態王子。

 邪な経験値を、純粋なピアノに応用するか。


 ああ、だけど今は、そんなことはどうでもいい。

 過程がどうであれ、こんなに綺麗に弾いてくれるナツに失礼だから。


 そして――曲は終わった。


 ナツが恥ずかしそうに立ち上がり、またあたしに頭を下げて挨拶をする。


「ブラボ-、ナツ。ブラボーブラボーっ!!」


 あたしは泣きながら、狂ったように拍手をした。


 ナツ、あんたは凄いよっ!!



 そして再び響いたビリビリビリ。


 途端におばさんが動いて照明が暗くなる。

 おばさん、その素早さ……さすがサバンナの帝王の母親だね。


 おばさんの血は、帝王にも確実に引き継がれているらしい。


 そしてスポットライトがつき、現れたのは――。


「!!!?」



 白衣を脱いだハル兄だった。
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