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目が覚めたら。
第3章 変態王子様は×××でした。
――まだ"食事"には時間がある。気分転換に12年後の東京を見てこい。
いまだ混乱続くあたしに、ハル兄は言った。
エスコートに任命されたのは、時間にゆとりがある大学生のナツ。
凄く嬉しそうに王子様スマイルで微笑んだ。
12年後の東京――。
やはり、記憶より12年経った西暦が、当然のように街に溢れている。
とにかく、肌の露出度が高いものが好まれていたファッションも、少しレトロにも思える個性的なものが多く街に溢れ、けばけばしさよりもさりげなさにお洒落のポイントを置いたような人々が行き交う。
あたしの私服、まだあるのなら……ちょっと着て歩くのは恥ずかしい。
着替えのないあたしは、病衣の上にナツのコートを羽織って、タクシーにて銀座に連れられた。
まずはタクシーの初乗り料金の高さに驚き、その精算をゴールドカードでしてしまったナツにもっと驚かされ、さらにナツに案内されて入った銀座一等地の、超高級ブランドショップにて、白い手袋をつけた正装姿の店員がこぞって頭を下げてナツを出迎えたことに、さらに驚かされた。
「ナ、ナツ……どこぞの財閥の御曹司?」
「やだなしーちゃん。僕の父さんヒラの公務員だよ?」
だよね、そうだよね。
12年の間に、脇役AかBかCが、主役に大抜擢は難しい。
……というか、おじさん。12年たってもまだヒラなのか。
「ナツ、ただの大学生だよね」
「……そう。本命落ちて、滑り止め大学の1年生。浪人はだめだって皆が言うから……」
ナツのテンションが低くなる。
ハル兄は、女の敵でも東大生。昔から、勉強した様子はまったくないのにやたら頭はよかった。だから女に殺されずに、のうのうと生延びてこれたのだろうけれど。
対してナツは昔からなにをやらせてもトロくて、試験で20点取れれば大喜びする、不出来な弟だった。
そのナツの滑り止め。……大学名は聞くまい。聞いてもわからない教育機関かもしれないし、まあ大学が入れるだけ成長したということで、後で褒めてあげようじゃないか。
しかし、ならば尚更。
「なんでこんなところ……VIP扱いなの?」
「あぁ僕、苦学生だからバイトしてるんだ。ほら」