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目が覚めたら。
第3章 変態王子様は×××でした。
 
 さりげなく、くいと顎で促した先にあるのは、モノクロ調の大きなポスター。

 俯き加減の男が、その目だけを狙いを定めた肉食獣のように挑発的に光らせながら、裸の上半身に白いシャツかなにかを着ようとしている。


 ナツだ。どう見てもナツだ。

 ひぇぇぇぇっ!?



「ナ、ナツ!?」


 指をさすと、ぽっとナツは顔を赤く染めた。


「あんまりじろじろ見ないで。恥ずかしいから」


 この初々しい小動物が、あのポスターと同一人物だとは信じられない。

 だが本人だというのなら、夢の王子様はやはり帝王の血を引いている。


 うわーあんな感じで迫られたら、女はひとたまりもないね!!

 すごいギャップもいいところだ。


「……しーちゃんは、あっちの僕の方が好み?」

「あたしは……今のままのナツでいい」


 むしろハナタレデブの方が気楽でいいのだけれど。


 だって、視線!!

 店員からも客からも、視線!!


 ナツにうっとり、連れのあたしに憤怒!!

 あたしは目覚めたての子鹿だっていうのに!!



「……よかった。あれ、波瑠兄意識してたから。あっちの方がいいと言われたら、しーちゃんスマキにしてサバンナに連れて、裸エプロンさせなくちゃいけないところだった」
 
 どうしてそんな発想になるのかわからないが、あたしの興味はナツのポスターのちらりと覗く割れた腹筋に注がれた。


「ナツ……あんた腹筋割れているの?」

 
 するとナツは、妖艶な眼差しを向けてくる。


「確かめてみる? どうせなら……もっと下まで」


 そうあたしの手を取り、服の下に入れてそのままズボンの中にまで入れようとした。……ガン見されている公衆の面前で。

 あたしは見事に割れていたその腹筋の表層だけを確かめると、にこりと微笑んでそこに拳を入れた。だけど人の目がある手前、くの字型になるナツを心配しているように背中をさする。


「……ふふふ、甘いね、ナツ。もっと中身も鍛えなきゃ」

「しーちゃん、容赦ないね……」


 表層だけでも、割れた腹筋を持つ変態王子はすすり泣き。


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