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目が覚めたら。
第7章 鬼畜帝王が暴走しました。


「ナツがくれたこのチャンス。俺はそれを無駄にはしねぇ。

いいか、シズ。ここからは捨て身で俺に勝負をかけろ」


 ハル兄の顔には余裕めいた笑みはない。

 途方もなく真剣だ。



「俺とガチ勝負だ。無論……お前に拒否権はねぇ」



 捨て身を強いられるハル兄のED治療。

 
 それでも回復の兆しがあるのならと、あたしは神妙な顔で頷いた。



「まずは位置。お前はその位置に正座しろ」


 こくりと頷き、あたしはベッドの真ん中で正座する。


「お前の目線がここなら、俺の位置はここらへんか」


 ハル兄はあたしの至近距離で膝立ちになる。

 一体、ふたりの配置がどう関係あるのだろう。


 ハル兄は、なにを始めようとしているの……?



 ハル兄が憂いを帯びた目であたしを見下ろした。

 あたしは……ごくりと唾を飲み込んで、ハル兄を見上げた。


 視線が絡まり、ハル兄の瞳が一度大きく揺れた。


 その瞳を細めながら、ハル兄の口は動く。

 なにを言われるのだろうと、あたしは息を飲みこむ。


「シズ……。今から……俺を溺愛することを許す」


「……は?」



「今から俺を、お前の妄想の中で片思いさせてやる。さらには告白させてやる。だから真剣に来い。わかったな、はいスタート」


 パチン。


 ハル兄が膝立ちのまま、あたしの前で柏をひとつ打った。


「シズ。なにぽかんとしてんだ。さっさと来い」

「……ハ、ハル兄……。なんでそんなことが必要なの?」

「いいんだよ、拒否権はねぇんだよ、お前には」

「拒否権がどうのというより、突然そう言われて……あたしに出来るわけないじゃんか!! あたし女優じゃないんだし、そう簡単に役になりきれるわけ……」

「やれ。やってからほざけ。ほら真剣に!」


 焦っているような顔で急かされ、あたしは言った。



「……ハル兄、好き……

――……です?」


「……なぜ疑問系だ!」


「ハルニィ、スキスキ」


「なんだその棒読みは! もっと気持ちを込めろ!」


 何度か挑戦してみたが、どうもハル兄がお気に召すような告白が出来ないらしい。
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