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目が覚めたら。
第7章 鬼畜帝王が暴走しました。
 

「さっきのでいいんだよ、さっきので!」

「さっきって、疑問系? 棒読み?」

「もっと前だよ、前!」

「え~。あたしハル兄にOK貰うようなこと言ってた?」


 いつのこと? 全然記憶がない。


「ひとの純情弄びやがって! このミジンコ頭!」


 意味不明なことを言って、あたしの頭にチョップが落とされた。

 軽くではない。脳裏にひよこが廻り始めるほど強い。


「突然言われても出来ないって! 役者だってその役になりきるまでに、その役柄の過去とか環境とかいろんなことを加味して演じるでしょう?」

「……ひとの気もしらねぇで、ご大層なことを……。設定が必要なら、くれてやる」


 ハル兄は咳払いをひとつすると語った。


「いいか、お前は昔から俺を好きで好きで仕方が無い。俺を忘れるために何百人ものいろんなオトコと付き合ってセックスしてみたが、どうしても俺の身代わりにしてしまい本気になりない。逆に俺からオトコ遊びを心配されるほど、俺の気を引いている気になって、嬉しくなってまたオトコ遊びに走るという悪循環」


 設定は、付け刃にしては随分と具体的だ。

 しかしあたしが共感できる設定では無かった。


「うわ、最悪のビッチじゃん。大体、そこまで好きなら、さっさと告白しちゃえばいいじゃないの、体を他の奴に触らせなくたって。どうせなら純愛路線でいこうよ、せめて!」

「簡単に告れれば苦労しねぇんだよっ! 仕方がねぇだろうが、自覚が遅かったんだからっ! ロリかと悩み続けた気持ち、お前わかるか!?」


 あたしの頭に、ふたたびチョップが落とされる。


 ひよこと一緒に星も飛んだ。


「なんであたしが怒られるの!? 架空の設定の話でしょう!?」

「ああ、そうだ。架空も架空っ! それにこれはビッチじゃねぇよ、純愛だ純愛っ! 心は他のオトコにやってねぇんだから! 一途だ一途!」


「……そうかなぁ。そういうの一途とか純愛って言うのかなぁ?」


「お前もしつけぇな。俺が純愛だっていうんだから、純愛なんだよっ!」


 ハル兄の方が執拗に純愛を強要してくる。

 彼の中では、純愛路線は動かしたくないらしい。

 女を食らってばかりいる帝王の思考は、よくわからない。
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