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目が覚めたら。
第8章 鬼畜帝王が暴走しました。2
「ハル兄、ナツ。どちらも……卑怯な言い方かも知れませんが、12年前以上に好きです。多分、幼なじみ以上に、異性として意識してます」
好きな気持ちに優劣はつけたくない。
「だから消える関係にはなりたくない。あのふたりは特別すぎるから、いずれ消えるかもしれない"恋人"になりたくない。あたしはいまだ、消えない愛というのが信じられない。恐いんです、失うのが。だから一歩を踏み出せない。今のままでいいと思ってしまう。それくらい大切なのに……」
あたしは項垂れながら続けた。
「そのくせ……あたしは生きるためにあのふたりを危険にさらさないといけない。そして、そうしてでもふたりが欲しいという、浅ましい肉体の欲求を抑えることができなくなる時がある。求め求められる時間が嬉しいと思う。甘い時間に浸りたいと思う。矛盾ですよね。……だからどうしても思ってしまう。あたしが体に執着する淫魔などでなければ……」
"あのふたりと、あたしは素直に恋に落ちていたかもしれないのに"
その言葉は紡げなかった。
それはあまりに自惚れたような、高慢すぎる意見だ。
「静流ちゃんは……過去のトラウマから、頭で色々考えすぎているのね」
おばさんは苦笑した。
「静流ちゃんの攻略は"永遠の愛"を信じさせることか。ねぇ、静流ちゃん。頭はよくないことも色々考えすぎるけれど……体というものは正直なのよ。心にね」
「………」
「今の静流ちゃんにとってセックスは生きる"手段"なのかもしれないけれど、逆に言えばその手段からだって愛は芽生えるの。現に貴方のお父さんとお母さんはそうだった。ふたりは不幸そうだった?」
「……いいえ。すごく幸せそうでした」
「でしょう? 頭で愛が理解できないのなら、体で愛を感じなさい。それは貴方自身のことでもあり、相手のことでもある。相手の言動に惑わされるのなら、相手の体からそれを感じ取りなさい。そうすれば静流ちゃんもわかるはず。本当に愛されているのかどうか。頭でぐだぐだ考えるよりも、余程すんなりとよくわかるわ」
「頭より体で……」
「そう。それが出来た時、貴方は自分のトラウマから解放されると思うわ」
すごく、おばさんの言葉が心に響いた。