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目が覚めたら。
第8章 鬼畜帝王が暴走しました。2
結局――。
――最初から素直に甘えればいいんだよ。
……ぐりんぐりんの恐怖に負けてしまったあたし。
その結果――。
目的地は目と鼻の先なのに、ここは通学路だから一方通行だとかなんだとか、なんでいつも無視しているようなものに今細かく拘って遵守しないといけないのか、まったくわからないハル兄によって、完全に遠回りされ……結局その日、あたしはピアノ教室に行けず、ハル兄が満足するまでツーリングに付き合わされたのだ。
――シズ、楽しいだろ? な?
……楽しいはずがない。
ノーヘルで乗せられた小学生が、上機嫌のハル兄に……(今だから思う)総長時代に培った危険すぎるバイクテクを披露されても、パトカーとの命からがらの逃走劇に巻き込まれても、それは恐い思い出でしかなく。
――俺のテクはすげぇだろ! 俺様は最高だろ、な、シズっ!
悲鳴をあげながらハル兄にしがみついたままのあたしは、最悪だった。
20年経ってもハル兄のバイク走行は、スリル満載エキセントリック。
……ノーヘルで。
しかも警察に追いかけられて。
昔、もう絶対ハル兄のバイクに乗らないと心に決めていたことを今さらながら思い出し、後悔しながら……必死にハル兄のお腹に手を回してて背中にしがみついていた。……昔と同じように。
それにハル兄が、ふっと笑みを零したことも知らずに。