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目が覚めたら。
第8章 鬼畜帝王が暴走しました。2
「ハル兄、あたしひとりで歩くよ。なんか恥ずかしくて」
ああ、ひそひそとした声が、あたしを笑っているように聞こえてくる。
実際、なんて不釣り合いだと笑われているのだろう。
現実をわかってはいるけど……やけに惨めだ。
否定出来ないからこそ余計に。
だから恥ずかしい……。
「とりあえず、この手、離そうか」
そう言って離そうとすると、逆に凄い握力を披露しがっちりと握ってきて手を離そうとしないハル兄が、顰めっ面で不機嫌そうに言った。
「……36歳に容赦ねぇな、お前。夢も見させねぇのかよ」
はて、なぜ"36歳"がそこに?
あたしそれらしいこと言ったっけ?
どう考えても、それに結びつくことは口にしていない。
もしやハル兄――。
あたしが恥ずかしいといった意味を取り違えているんじゃ?
どれだけ、歳を気にしてるんだ?
夢……って、ハル兄も手を繋ぎたかったとか?
なんだかんだと弟と同じ、手を繋ぐのが好きなのか。
なんだか可愛いハル兄に、いじけてたあたしの心も少しほっこりする。
「ハル兄36歳にナーバスになりすぎ。歳なんて関係ないよ。そんなこと一切思ってなかったし」
「……じゃあ、なんで俺と手を繋ぐのが恥ずかしいんだ? ナツとは、散々人に見せつけるようにしてるくせに」
「は? なんでそこにナツ?」
聞き返すと、ハル兄はしまったというように顔を顰め、横を向いてしまった。
「だから。なんで俺とは嫌なんだよ」
顔をそむけたまま、拗ねたような物言いが返ってくる。
しつこい。