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目が覚めたら。
第8章 鬼畜帝王が暴走しました。2
豪華なシャンデリアが吊られたロビー。
溢れかえる豪華な衣装の男女達。
待機する報道カメラマン。
初めて足を踏み入れた、セレブの集う空間。
なにもかにもが煌びやかすぎる場面に、くらくらする。
かなり大規模なものが開催されるのだろう。
その群れを颯爽と横切るあたし達だけは異質。
否――。
居城にお戻りの帝王様は、こんな豪奢な空気に飲まれることなく、主らしくいつも通り威風堂々としており、この中で完全異質なのは、Tシャツとデニムのミニスカートでよたよた歩く小心者の庶民以下の愚民、あたしひとりだけ。
そんな愚民と手を繋いで歩く帝王。
帝王は、はだけ気味の灰色のしっとりとした生地のブラウスと黒デニム。
同じデニム生地だけれど、モデルが違えば高級感が違う。
形的には"恋人繋ぎ"なのであるが、どう見てもこれは、奴隷に繋がる鎖を帝王自らが引いて歩いて居る図だ。
だから余計に、まだ完全に脚力が戻りきらないあたしの動きが、手枷足枷に鉄球をぶらさげている奴隷っぽさを強調しているように思えて仕方がない。
事実がどうであれ、淑女の熱い視線を集めている帝王と、みるからに不似合いなしみったれた奴隷の組み合わせを見せつけるのは、気まぐれ帝王様はよくても、奴隷的には居たたまれない羞恥プレイ。
ハル兄は、このホテルで連れ歩く人選を間違った。
もしくはもっと安っぽい萎びたホテルを選ぶべきだった。
帝王様にお似合いの帝王ホテルは、あたしにとっては格調が高すぎる。
場違いすぎる、セレブな空間だ。
これでは帝王様も、いい恥っさらしだ。
だからせめて、この人だかりを抜ける間だけでも、ハル兄と他人のふりをしたくて提案をしてみた。