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目が覚めたら。
第8章 鬼畜帝王が暴走しました。2
「だから俺は、お前の愛が欲しい」
これは恋人の迫真の演技、この切なそうな面差しにぐらりとするんじゃない。
しっかりしろ、あたし!!
さあ、帝王様が望む愛を献上するんだ!!
あたしは愛に溢れた"恋人"なんだから!
「いいよ、あたし如きの愛でいいのなら、幾らでも」
笑顔で両手を広げカモン状態にすると、ハル兄は怒り出した。
「違うだろ。今度はなんで"あたし如き"? お前、むかつくほど爽やかな卑屈になって、なにずれまくってんだよ!」
「ず、ずれ……?」
「この俺が、俺様がっ!! お前を愛してるって言ってるんだぞ!? もっと狼狽しろよ、もっと感動しろよ! もっと、顔をぽっと赤く染めるとか目をうるうるさせるとかさ!! お前、夜はあんなに可愛い反応したのに、今はなんでそんなにあっさりしすぎてるわけ!?」
これは、心からの謝辞を求められているのだろうか。
ああ、帝王様の自信を早く回復したいんだな。
病は気からと言うし、まずは精神的充実感を味わおうとしているわけか。
さすがは医者、ちゃんと体のことを考えているね。
思い出すんだ。
ハル兄が昔拘った、心をこめた感謝の体現を。
あたしはその場に両手をついて、深くお辞儀をした。
「私め如きを愛して下さり、ありがとうございます」
愚民の心得。
感謝は最大限に、心からの礼を尽くせ。
即ち下僕、帝王に平伏したり。
「………」
「………」
「………」
「……?」
「……別にムードが最高潮になったわけでもねぇし、EDが完全回復したわけでもねぇし、環境が整ったわけでもねぇ。言うタイミングではねぇとわかってはいたさ。だけど、だけどさ。あんなに啖呵切られるほどに濡れ濡れになって、あんなに一心に愛あるフェラされて。だったら酒の勢い借りて、あわよくば……って考えた俺が甘かった。すっげぇ甘すぎた……」
ぶつぶつ、ぶつぶつ。
ハル兄がなにか独りごちている。
「なんで通じねぇ? アホタレなのはこいつか? それとも俺なのか? 足りねぇのは頭か? ムードか、硬さか!?」
そしてしゅんと項垂れた。
「俺、ED悪化するかも……」
え、あたし間違えた?
やばい、ハル兄が泣きそうだ。