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目が覚めたら。
第8章 鬼畜帝王が暴走しました。2
心臓がどくどくと早く波打つ。
体が熱くなって、喉の奥がひりひりしてくる。
やだ……。
ねぇ、なんなのこのひと。
空気が読めないのか、読んでいてしでかしている確信犯なのか。
なんで甘々になるの? あたしの話題でどうしてそんなに愛おしそうな仕草や言葉を向けるの?
体から伝わるハル兄の熱さに、酔ってしまう。
くらくら、目眩を感じてしまう。
寂寥感漂う暗い部屋に差し込むのは、一面に拡がる夜景の煌めき。
あたし達は燐光をまぶしたかのように、仄白く発光していて。
誰にも邪魔されることはない、喧噪を一切遮断した幻想的な景色が、あたしを大いに惑わせる。
誤解しちゃいそうになる
あたしは、演技ではなくて、本当にハル兄に愛されているのかもしれないと。
幼なじみとしてではなく、女として。
あたし、馬鹿な女になりたくないのに。
ハル兄の過去の女と同じにはなりたくないのに。
幻惑的な環境が、あたしの正常な思考力を奪っていく。
自惚れて、愛されたいと思う欲求が高まっていく。
ハル兄の体だけではなく、それ以上が欲しい気になってくる。この夜景のように、あたしだけをその瞳に閉じ込めて貰いたくなる。
「静流……」
こんな時、切なそうに呼び捨てにしないで。
頭に何度も優しいキスを落とさないで。
ああどうしよう。
ドキドキが止まらない。
息苦しくて、心臓発作で死んでしまいそう。
いつもより鋭敏になった五感が、ハル兄の存在を強く捕らえて離さないんだ。
ハル兄の甘い吐息の音。
ハル兄がもどかしく触る場所。
ハル兄の匂い。
体が熱くなる。
見えないハル兄で頭がいっぱいのあたしは、ハル兄の味を求めて、自然と唇が開いてしまう。頼りな気な細い息が漏れてしまう。
ハル兄、ハル兄。
体が熱くて、心までトロトロに溶けちゃうよ。
ハル兄の甘々に、蕩けきってしまうよ。