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目が覚めたら。
第8章 鬼畜帝王が暴走しました。2
己の纏う艶気を惜しげなく放出し、観客を発情させただけではなく、自分を求めた女に深いキスをしたまま抱いてお持ち帰り。
そんな破廉恥帝王の首に手を巻き付け、彼から施される甘いキスに夢中になっているあたしもあたしなのだろう。
静まったはずの"あたし"がざわめいている。
だけどそんな声など聴いていたくない。
キスをしている最中の、この……あたしの好きな苦しげなハル兄の顔にあてられてしまったから。
離れたくないの。
もっとくっついていたいの。
「ホント……お前、こうしている時、すげぇ俺に甘えるよな」
口端から銀の糸を繋いで、ハル兄は笑う。
濡れた漆黒色の瞳。
ハル兄こそが甘くなる。
見つめ合えば吸い寄せられるようにキスをする。舌を絡ませて、乱れた呼吸を漏らし……強くされれば、幸せになる。
戻った部屋は暗かった。
カーテンが掛かっていない、大きな窓に映るのは東京の夜景。
夜陰に煌めくネオンがまるで宝石をちりばめたよう。
見慣れているはずの東京の夜景も、こんなに綺麗だったのかと思わず感嘆の声を出してしまった。
まるで、光のシャワーだ。
ハル兄が見せたいといった夜景の眺望に、うっとりと目を輝かせれば、ハル兄はその夜景が一望できるソファにあたしを連れて座り、その膝の上にあたしを乗せた。
そして後からあたしの腹部に回した両手を組み、あたしの頭の上に顎を乗せて、嬉しそうな声を出した。
「な? 綺麗だろ。……ずっと、お前に見せたかったんだ」
「あたしに?」
「ああ。御堂からここのカードを貰ったのは、お前が眠った時だった。だからいつもこうして、ここで夜景を見ながら……悦ぶお前と一緒に見れたらって、ずっと思ってた。それが……一番の癒やしの時間だった」
切なげにも聞こえるその声に、胸がきゅううんと締め付けられる。
ねぇ、どうしてそんなことを言うの?
ハル兄、演技でもそんなキャラじゃないでしょう?
「あたしが目覚めたから、癒されなくなっちゃったね」
内心の動揺。誤魔化すように笑うしかできないあたし。
「アホタレ。お前が目覚めれば、癒やしは必要ねぇだろ。目覚めたお前が傍にいれば……幸せなんだから」
すり。
ハル兄の頬があたしの頭上にすり寄せられた。