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目が覚めたら。
第8章 鬼畜帝王が暴走しました。2
 

 ハル兄の目から笑みが消え、苦しげなものになる。

 ただハル兄の片手があたしの片手をとって、指を絡ませるようにして動かした。もどかしいなにかを伝えるように。


「……言ったろう? 酔っ払いは理解出来ねぇんだって。だから、わかるように簡単に説明してくれ。……今のは、どういう意味だ?」


 至近距離からあたしを射るように覗き込んでくる。

 熱く乱れるハル兄の息。強く弄るハル兄の手。


「今のあたしは、勘違いしまくりでおかしいの。だから忘れて」

「駄目だ。言え」

「いや、だから……とち狂ってるの。変なことばかり思ってるの、だから」

「シズ……。おかしくてもいい。今だけの勘違いのものでもとち狂ったものでもいい。お前の口から聞きてぇんだよ。どういう意味だ?」


 切れ長の目が切なげに細められた。

 だからあたしは――。
 


「ハル兄の過去の女ように、簡単に終わらせないで。

あたしだけを"特別"にして」



 震える声が口から漏れる。



――どういう意味だ?



 喉奥につかえていた言葉が、自然と紡ぎ出される――。



「……好き」



 ………。

 ………!!!!!?


 静まり返った部屋の中でやけに響いた自分の声に、はっと我に返った時、ハル兄のオトコらしい喉仏が、上下に動いた。


 わけがわからない。

 なんで"好き"だなんて言葉が出てしまったの!?


 テラスに居た時、ハル兄から聞いた"好き"に対して返したのと、まるで違う"好き"。独占欲と永続性が根付いた、この厄介な"好き"。


 ああ、なんでこんなこと口走ったの?

 おかしいよ、絶対今のあたしはおかしすぎる!!
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