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目が覚めたら。
第8章 鬼畜帝王が暴走しました。2
  

――あの子が静流ちゃんを抱く時も、馬鹿にした感じなの? 


――俺だってお前以外にこんなこと、したこともしようとも思ったこともねぇよ。



 ハル兄、勘違いしちゃうよ……。



――多分あの子が恋愛すると、朝から晩までもうずっと愛し続けて、尽くし続けて、でろんでろんになるタイプよ。

――体で伝えてやるよ、俺の愛。だからとことん……俺から愛される幸せに酔え。



 ああ、あたし……堕ちちゃうよ。


 この妖しげな魅力に包まれた夜の帝王に。

 錯覚ではなく、演技ではなく。


 現実では絶対報われないと知りつつも。


「俺に夢見させろ。俺達は……愛があるから、セックスをするんだと。それ以外の理由なんて、今はいらねぇ」


 微睡んでいるように、ゆったりと……甘い口調でハル兄は言う。


――波瑠もわかっているのよ。静流ちゃんは、奈都を選ぶことに。


「夢に……しちゃうの?」


 心に突き刺さったのは誰の言葉なのか。



「……目覚めたら、なにもないことにしちゃうの?」


 あたしは思わずほろりと涙を零してしまった。


 ああ、あたしはなにかおかしい。

 感傷的になりすぎている。


 ちくちくと、形にならない感情が胸の奥から喉もとまで込み上げているのに、それが出て来ない。



「シズ……なに泣くんだよ、お前……」


 甘く笑いながら、ハル兄はあたしの目尻に頬に、涙の跡を唇で拭う。


「俺とのこと、夢にしたくねぇの?」


 あたしを覗き込むようにして、ハル兄は甘気を強めた声を向けた。


 柔らかく笑うハル兄が、青白い光に染まる。


 ……まるで知らないオトコのひとみたい。


 あたしの中からの佐伯波瑠が消えて行きそうで、あたしはハル兄の頬に手を添えると、思わず唇にキスをしてしまった。


「目覚めても、あたしの隣にいて欲しいよ」
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