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目が覚めたら。
第4章 鬼畜帝王は×××でした。
東大付属病院――。
「――ほう? 俺がこんなに忙しく仕事している間、ふたり仲良く手を繋いでお帰りか。随分と親密度UPしたな」
病室に戻れば、白衣のままのハル兄があたしが寝ていたベッドでタバコを咥えながら靴を履いたまま寝転がり、『みるくせ~き ~ロリ顔巨乳とイイコトしましょ~』などというふざけたタイトルの漫画雑誌を読んでいた。
あんな露骨すぎる牛女の表紙、店員さんはどんな顔でレジをしたのだろう。権威ある白衣を翻させて、恐らく買う方が堂々としていたと思う。
どう見てもくつろいでいて、仕事をしている様子がまるで感じられないハル兄は、弧を描く口元に反して、細められた切れ長の目の鋭利な光がなんだか恐い。
おかしな光線を飛ばしそうだ。
「しかもご使用は、プリンセスホテルときたか」
やばい。
あの眼力は、透視能力でもあるのだろうか。
それとも変態王子の血を引く、ストーカー魂のなせる技なのか。
「その匂い……」
ハル兄は、タバコを堂々とふかしながら淡々と言う。
「そのフローラル石鹸の匂いはプリンセスホテル。東京で俺が知らぬ、ホテルの石鹸の匂いはねぇ」
……恐らく、石鹸を使うに至る展開すべてが、彼ご自慢の性経験値に加算されているのだろう。
東京のホテル石鹸は、ハル兄の嗅覚の支配下にあるようだ。
というか、そんなにタバコを吸っているのに、距離あるところから匂うものの判別できるんだ? さすがは野生の、サバンナの帝王。