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目が覚めたら。
第4章 鬼畜帝王は×××でした。
そんな時、短い機械音が鳴った。
「僕だ。……メール……」
尻ポッケからスマホを取り出して画面をみていたナツは、やがて上目遣いであたしを見る。やけに意味ありげな、艶を帯びた眼差しで。
「……しーちゃん、誰から来たのか……気になったりしちゃう?」
「いやしない。全然」
即答すると、項垂れたナツからすすり泣きが聞こえた。
「シズ。健気な弟が不憫すぎるんだが」
「え、どこらへんが?」
首を傾げれば、ハル兄は大きくため息をついてタバコに火を付ける。
く~。だからその眉間に皺寄せたその顔は、やばいって。
「……ガン見してもやらねぇぞ、タバコ」
「いりません」
タバコよりも、タバコを吸う姿に見惚れてましたなどとは、口が裂けてもいえない。これは墓場に持って行かねばならぬ極秘情報だ。
「おい、ナツ。画面見て動き止まってるぞ。どうした、女か」
「へぇ、女なんだ。痴情のもつれ?」
「しーちゃん、にやにやしないで気にしてよっ!」
ナツが涙目であたしに訴える。
「僕達、あんなにラブラブしたカレカノじゃないかっ!」
事実に一部訂正の必要あり。
それをしたのはお兄様だった。
「ナツ。カレカノはぞろ目の最高記録打ち破ってシズのナカにぶち込んでからの話だ。食われてばかりの今のお前は、肉食シズにとってはただの餌隊員、そのAだ」
微妙に否定出来ない。
「……くっ! しーちゃん、餌にも至上の愛は生まれるよね?」
「ん~、どうだろう。餌は餌だしねぇ」
ごく一般論を述べたつもりだったが、ナツが悲しみの海に溺れていた。
連続的なドーナツ型の煙を作ることに夢中になっている非情な兄の前で、あたしは必死に人命救助。このドーナツ、浮き輪になればいいのに。
「しーちゃん、救助には……ちゅ~」
途端顔の角度を変え、半開きの唇から艶めかしい舌を覗かせて見せたナツに、ハル兄のドーナツの煙が幾重にも張り付いた。
「けほっ、けほっ。波瑠兄……邪魔、しーちゃんとのディープにこれ邪魔」
このオトコ、兄の前でディープをやらかす気でいたのか。
どこまで性情報開示にオープンな兄弟だよ。