この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
目が覚めたら。
第1章 貴方は誰ですか。
「あたしは、こっぱずかしい"しーし"なんて呼び方を、初対面の方に許可していないんだけれど」
「初対面じゃないよ、幼なじみだよ!? 生まれながらに赤い糸で結ばれた、乙女が大好きな恋愛王道パターンを踏んでいるんだよ!?」
「男の貴方に乙女を語って貰いたくはないんだけれど」
しかし、その台詞……どこかであたし、吐いたような。
ああ、そうだ。……ナツに。せがまれてうるさかったから、棒読みで読んだだけだ、雑誌の記事の見出しを。確か、幼なじみの恋愛を主軸にした恋愛映画の紹介だったような。
「くっ……!! 僕を信じないんだね、だったらこれ見てよ。しーしをドライブに連れようとして頑張って仮免4回、本試験3回以内で取れた運転免許証!!」
仮免4回、本試験3回以内……。
どうにかこうにか取れたらしい免許証を、黄門様の印籠の如く得意げに突きつける中には、カメラ目線ばっちりの芸能人風のコイツが映っている。
いい男は、証明書の写真も光り輝くものらしい。
名前、住所、誕生日。驚くことにナツと同じだ。
あれ、免許って小学生はとれただろうか。
いや待てよ、この取得日……。
「この西暦って、12年後じゃん」
これは未来の免許!?
それとも、根本的間違いを犯した偽造免許?
ナツがテレビをつけた。
ニュースがながれる。キャスターもテロップも……やはり12年後の数字。
――えっ?
「しーしは、眠っていたんだよ。12年」
甘い色彩に包まれた美男子は、辛辣な言葉を淡々と述べる。
「嘘……」
「嘘じゃない。だから僕は今19歳。17歳で眠ったしーしより2つ年上」
ああ、神様。マジですか?
12年という年月は、ハナタレデブをここまで変えるんですか?
いや問題はそこじゃない。
いやいや、そこも問題だけれども。
12年――あたし、眠っていたんですか?