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目が覚めたら。
第9章 変態王子様の奮闘
 



 ………。

 なんであたし、ナツに怒るの?

 ナツはただ、クソメガネと電話してスマホの画面を見て、予定通り売店行っただけだ。

 そしてあたしは勝手に『モモ』を勘違いして、落込んでベソかいて連絡を絶った挙げ句、心配して奔走していたナツを怒らせた……ことの顛末。


 どちらに非があるのかといえば、たとえナツの思惑があったとしても、なにひとつ事実確認せず勝手に暴走したあたしだ。

 しかもクソメガネの助力なければ、真相は判明しなかった。

 あたしはなにひとつ、自分で解決に動いていない。依存型からの自立に失敗し、忙しいハル兄まで引き込んでしまった。


 怒られるべきは、トラブルメーカーのあたしであり、ナツではない。


 そう思うのに、ナツは自責の念に囚われている。


「言い訳が許されるのなら……。僕はただ、しーちゃんが『モモ』の文字を見て、"他の女の子と電話しないで"と言われたかったんです。

"早く出たら"とか"なんで出ないの"って言われて……それが建前なのか本気なのか確かめる為に、しーちゃんの傍から離れて様子を窺おうとしました。


まさかその間に、モモという名前の女の子が現れて、僕が心変わりしているシナリオになっているとは露知らず……。これもバチがあたったんです」


 繋げられた手から、ナツの心が伝わってくる。


「こんなになるとは思っていなかった。ただ……しーちゃんの心を、僕で一杯にするためにどうしたらいいのか、どうすれば波瑠兄みたいに大人のエスコートできるのか、どうすればしーちゃんをもっと綺麗にできるのか、そればかり考えていて……浅はかな行動をしてしまいました。ごめんなさい」

 握られた手の上、俯いたままのナツから、ぽたぽたと雫が落ちてくる。


「……僕、しーちゃんを過去の女になんてしていないし、他に目を向けようともしてません。ミスコンのモモなんて覚えてません。これ、僕のスマホです。メールや着歴、発信履歴、アドレス帳から全部見ていいです。全部かけて確かめていいです。僕……浮気してません。本命はしーちゃんだけです。ずっとそれは、変わっていません」


 ぐすりと鼻をすすられ、聞いているあたしもまた鼻をすすってしまった。


 もうやだ、この子……。


「ナツ……あたしこそごめんなさい……」


 可愛すぎて、胸が苦しくなる。


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