この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
目が覚めたら。
第9章 変態王子様の奮闘
………。
なんであたし、ナツに怒るの?
ナツはただ、クソメガネと電話してスマホの画面を見て、予定通り売店行っただけだ。
そしてあたしは勝手に『モモ』を勘違いして、落込んでベソかいて連絡を絶った挙げ句、心配して奔走していたナツを怒らせた……ことの顛末。
どちらに非があるのかといえば、たとえナツの思惑があったとしても、なにひとつ事実確認せず勝手に暴走したあたしだ。
しかもクソメガネの助力なければ、真相は判明しなかった。
あたしはなにひとつ、自分で解決に動いていない。依存型からの自立に失敗し、忙しいハル兄まで引き込んでしまった。
怒られるべきは、トラブルメーカーのあたしであり、ナツではない。
そう思うのに、ナツは自責の念に囚われている。
「言い訳が許されるのなら……。僕はただ、しーちゃんが『モモ』の文字を見て、"他の女の子と電話しないで"と言われたかったんです。
"早く出たら"とか"なんで出ないの"って言われて……それが建前なのか本気なのか確かめる為に、しーちゃんの傍から離れて様子を窺おうとしました。
まさかその間に、モモという名前の女の子が現れて、僕が心変わりしているシナリオになっているとは露知らず……。これもバチがあたったんです」
繋げられた手から、ナツの心が伝わってくる。
「こんなになるとは思っていなかった。ただ……しーちゃんの心を、僕で一杯にするためにどうしたらいいのか、どうすれば波瑠兄みたいに大人のエスコートできるのか、どうすればしーちゃんをもっと綺麗にできるのか、そればかり考えていて……浅はかな行動をしてしまいました。ごめんなさい」
握られた手の上、俯いたままのナツから、ぽたぽたと雫が落ちてくる。
「……僕、しーちゃんを過去の女になんてしていないし、他に目を向けようともしてません。ミスコンのモモなんて覚えてません。これ、僕のスマホです。メールや着歴、発信履歴、アドレス帳から全部見ていいです。全部かけて確かめていいです。僕……浮気してません。本命はしーちゃんだけです。ずっとそれは、変わっていません」
ぐすりと鼻をすすられ、聞いているあたしもまた鼻をすすってしまった。
もうやだ、この子……。
「ナツ……あたしこそごめんなさい……」
可愛すぎて、胸が苦しくなる。