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目が覚めたら。
第4章 鬼畜帝王は×××でした。
ハル兄が超然と笑った。
「シズ――。
俺を、簡単に餌に出来るなどと思うなよ?」
ゆっくりと動く肉厚の唇。
切れ長の目が捕食者のものとなる。
「俺はナツのように、お前の掌で転がる男じゃねぇ。俺を餌にしたくば、まず俺をその気にさせろ。話はそれからだ。
言っておくが、俺は簡単には堕ちねぇぞ。食われる前に……お前を随まで食ってやる」
ぞくり。
白衣越しに迸(ほとばし)る男の色気。それは帝王の貫禄だ。
やばい、この人やばい……。
なにがやばいかよくわからぬまま、危険信号がちかちか点滅しているのに、視線をそらせられない吸引力がある。
ハル兄はそんなあたしを見抜いたのか、超至近距離にて顔を止めると、ふぅっとあたしの顔に息を吹きかけた。
タバコ臭い。
だけど凄く、鳥肌が立つほど……この匂いに体が痺れる。
これが帝王のフェロモンか。
「俺を食いたいか、シズ。だがな、今のお前では到底無理だ。お前の裸を見ても勃ちもしねぇ」
ああ、なんで――。
「それと、俺とのセックスに愛だの恋だの甘ったるさを求めるな。俺にとってセックスはただの性処理、お前にとっての"食事"と同列の本能のなせるもの。
お前が不発に終わった"恋人ごっこ"の延長で、食おうというのならそれはナツにしろ。俺は甘さはやらん」
なんでこんなに悲しく思うのだろう。
今まで散々酷いことを言われてきたし、酷い目にも合わされてきた。
確かに"餌"という点では、佐伯兄弟に負担をかけることになるし、あたしもまたこの兄弟には細心の注意を払わねばならない特別な存在だ。
わかっている。
「俺に貪られる覚悟があるなら、俺を食いにかかってこい。俺を全力で挑発しろ。……簡単には俺はやらん」
散々女を食い散らかしたサバンナの帝王。
どんな女もハル兄を独り占め出来なかった。
彼は女が独占できる存在ではないのだ。
……それは、あたしだって同じ事。
幾らあたしが幼なじみでも、幾らハル兄があたしの担当医でも。
それは"特別"ではない。
たまたま、だ。
なにを自惚れていたのだろう。
別にハル兄に恋愛感情があるわけではないのに、恋愛感情は持ち得ないと宣言されることがこんなに悲しくなるなんて。