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目が覚めたら。
第10章 変態王子様のご褒美
ハル兄も佐伯のおばさまも、あらかじめ知っている"運命"とやら。
その情報をもたらしたものは、同じ淫魔であったというあたしの死んだママからであろうが、その詳細は明らかにしてくれない。
本人が知らず、他人が知る"運命"には本当に真実性があるのか。
そこを突き詰めれば、他人の運命を知ることを生業にしている占い師等の存在は、真実か否かの話になってしまうだろうけれど、おばさまとハル兄を納得させられるだけのものが、ママからもたらされたことは間違いない。
ナツに関係するという、あたしの"運命"――。
あたしの淫魔という特質が特殊だから、ナツを縛るのか。
それともナツだから、特殊なあたしが惹き付けられるのかよくわからない。
どうしてナツなのか。
どうして他の男ではないのか。
ナツにも特殊性があるのだろうか。
まあ、普通ではない。
脇道にそれて歩いても、いまだ正道だと笑顔で信じる変態王子よろしく、今はやつれきっているくせにエロ王子だ。
男とは思えぬきめ細やかなその肌には、溌剌とした色味は失われているものの、代わって化粧を施しているかのような大人びた艶味を強めて、ナツは浅い寝息をたてている。
「ん……」
時折漏れる苦しげな声すらも喘ぎのような淫艶を濃くし、儚げな涙の筋を光らせながら、彼の意識なく撒き散らされるその艶香は凄絶だった。
これがナツの故意ではないというのなら、今のナツが本気を見せればあたしはどうなるのだろうか。
儚さを見せるナツは、庇護欲と共にあたしの加虐心を強め。
そのくせ、撒き散らされる色気はあたしを捕えようと攻撃的で。
その上、あたしはナツの漏らした言葉や姿にぐらぐらしてしまっている。
この状態でナツの意志で誘ってきたら、あたしは操り人形のようにナツに従い、そして「下のお口」に挿入されることを拒められない。
あたしは、ナツを消したくない。
早漏克服が完璧ではない今は、それはきっちりと拒絶すべきだ。
今は。
そう心に固く誓っていた時、不意に視線を感じて。
目を向ければ、ココア色の瞳が薄く開いてあたしを見ていた。