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目が覚めたら。
第10章 変態王子様のご褒美
「ナツ、気がついた?」
まだ意識が朦朧としているのだろうか。
気怠げに、とろんと微睡んだような目が向けられて。
とろとろ、とろとろ。
欲情した時なみの蜜をまぶしているかのような蕩け具合に、ぐらぐらぐらぐらあたしの心が揺れる。
精神的な心の揺れは、けたたましい心臓の音に上書きされ、喉の奥が熱をもってひりひりする。
な、なにこのエロい生き物。
やばい。
ナツのこの色気、やばい。
ナツに吸い込まれそうになる心に喝を入れながら、必死にぎこちない笑みを作ってナツの色気攻撃をかわし続けていると、とろとろとしたナツの目が、その意志をもって小刻みに揺れた。
とろとろな瞳に熱が生じている。
「しーちゃん……?」
ナツの唇が、薄く開く。
やるせなさそうな切なげな息と共に、熱を帯びたあたしの名前が吐き出され、その名を抱くあたしの肌が愛撫されているかのようにざわめいた。
ひぃぃぃぃっ!!
ナツ、ナツ。
やばいよ、ナツの甘ったるいその声だけでもうやばいって。
「僕の大好きな、しーちゃん……?」
声と共に、ナツの柔らかな髪先が頬を滑り落ち、代わって見えるは白い首筋。乱れたガウンの中へと続くそのラインが、そして覗く鎖骨が、男を強烈に主張しながらも、艶めいた悩ましさをも強調させる。
狂騒する心臓が、一生分働き過ぎて突然ぶつっと止りそうだ。
呼吸すら奪う、妖艶な姿態をひけらかすナツ。
「これは夢……? しーちゃんが見えるのは幻?」
死ぬ。
あたし死んじゃう。
このエロ王子は、淫魔の敵!!
しーちゃんがナっちゃん襲う前に。
いやいや、しーちゃんがナっちゃんに食べられちゃう前に。
そう、色々な意味での危機感を覚えたあたしがとった方法は――。
「そうよナツ、これは夢よ。おやすみなさい」
もうここはナツにお眠り頂こう。
強制的に。ご希望とあらば子守歌でも歌うから。