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目が覚めたら。
第4章 鬼畜帝王は×××でした。
あたしのおねだりに、首筋から視線だけを寄越すハル兄。
剥き出しの情欲に満ちた眼差しに、ぞくりとする。
あたしをメスだと思ってくれているのかと思えば、昂奮してくる。
この男なら食われてもいい。
"いや、この男だからこそ食いたい"
相反しているようで、大して違いはない。
だってハル兄が欲しくてしかたがない気持ちには変わらないから。
だからあたしの、あたし"達"の欲求は、ひとつになる。
この美しい獣をあたしのものにしたい――。
「ハル兄……ちゅうして?」
多分、そのために必要だと思う……だからこその開始のキス。
捕食と被食に留まらない、ハル兄との新たなる関係に向けて。
……そう、本能が伝えるから。
しかし――。
乱れた黒い前髪から覗く漆黒色の瞳は、隠そうともしない滾る欲を熱視線にてあたしに伝えているというのに、ここまで扇情的なオスの艶を見せているというのに、両極端にいる"理性"で弾く。
忌まわしい、"医者"の立場を持ち出してくる。
「勘違いするなと言ったよな。これは愛の行為ではなく、医療行為だ。唇同士でキスをしたいなら、お前に愛を与えられる相手を探せ」
「ハル……兄……」
いまだ続く拒否が、心に刺さって痛いよ……。
「愛じゃないキスだって、此の世にはあるよ?」
「お前はそんなものを望むのか。この俺に」
少し怒ったような口調のハル兄。
「だってハル兄、そうやって他の女を食ってきたんでしょう?」
「……。他のどうでもいい女はな。だが……」
ハル兄は焦れたように目を細めた。
「お前は違うだろう、シズ?」
瞳のように、その声も熱を孕みながら。