この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
目が覚めたら。
第11章 鬼畜帝王が甘えました
あたし達が泊まる部屋は、フロントに近い……浴衣姿の宿泊客がちらほら見えていた棟から、離れるようにして歩いて行く。
依然、なぜハル兄があたしと夫婦ごっこをしたがったのかは、それ以降強固にだんまりを決め込まれたおかげで詳細は不明だけれど、こうして手を繋いだハル兄が、あたしの夫だなんて考えただけでもくすぐったい気持ちになる。
誰にも手に入れられない、『帝王の妻』というぴっかぴかの肩書きを持てた嬉しさと、その帝王があたしなんかを妻にしようと思ったおかしさ半々。
これもひとえに、お隣さんの付き合いがあったからで、妙に面倒見がいい理由がハル兄がロリコンだったからでもあって。
困らせられた思い出は多多あり、ほんどんの思い出が帝王様に屈服して、「もうこのどうしようもない男、叩き直してやりたい」とランドセル背負っていた世代から、何度も思い続けてきたが、それでもハル兄のおかげで救われている思い出もしっかりとあるのだ。
あたしのピンチを助けてくれたのは、王子様ならぬハル兄で。
王子様……。
「ぷ……」
頭からお花を咲かせる、可愛いナツなら想像できる。だがハル兄が、頭にきらきらの王冠でも乗せて、ひらひらの服とカボチャみたいなズボンはいた、白タイツの王子様と考えるのは……。
「ぷぷ……ぃぃぃぃぃっ!?」
思わず噴き出して笑ってしまうと、握られたままの手に、骨が砕かれそうな程力を入れられた。さらには繋がったままの手を持ち上げられ、がぶりと食いつかれた。可愛くかぷりではない、本格的に歯をたてられ、がぶりだ。