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目が覚めたら。
第11章 鬼畜帝王が甘えました

 
「ご夫婦ですか?」


 そう聞かれて、ハル兄は僅かにはにかんだような…そんな珍しい笑いを顔に浮かべた後、


「ああ、そうだ」


 嬉しそうな顔でしっかりと肯定したんだ。

 なんと、なんと!!

 目覚めたばかりの……一見、17歳の幼な妻風のアラサー淫魔、不遜なサバンナの帝王の王妃となってしまった。

 淫魔も吃驚仰天してまた眠りにつきそうな……、ねぇ、この突拍子もない事態、あたしどうすればいいんですか。

「可愛らしい奥様ですね。ご夫婦で、よき思い出をお作り下さいませ」

「ああ、さんきゅ。部屋まで案内はいらない。"特別室"なら看板見ればわかるし荷物も軽いから」

「わかりました。では後ほど、施設利用のご説明に伺います。非常口の位置等、緊急時に関わるご説明も致しますので、こちらは必ず」

「……わかった。では後で頼む」


 鍵を受け取り、支配人に手を上げて別れを告げたハル兄は、左手でふたつの荷物を肩に担ぎ、右手であたしの手を引くようにして掴むと、指を絡めさせるようにして握ってきた。

 しっかりと繋がれたその手に、多くの奇異の目が向けられているのがわかるが、背中を見せるハル兄は離そうとはしなかった。

 いや、恋人繋ぎ以上に気になることがある。


「ねぇハル兄、なんで夫婦……っ」


 ハル兄が足を止め、気怠げな顔をこちらに向けた。

 そしてこう言ったんだ。


「今、お前は俺のものだ。だから……せめて今くらい、夢見させろよ、36歳に。……どんなにお前が、俺の嫁になることは、ありえないことだと思ってたとしても」


 ねぇ、ハル兄は結婚願望ないんでしょう? なんだかその言い方なら、あたしを嫁にしたいのだと、そういう風に聞こえちゃうよ?

 切なそうな顔で哀願するように言われたから、あたしはなにも言えなくなってしまった。


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