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第19章 キズ

「一人で、抱え込まないでよ……」

　夢中で追ってきたくせに、何を言っていいのかわからず一言だけそう口にする。
　抵抗しても私が抱きつく腕を緩めないと悟ったのか、麻人は体の力を抜いた。それに乗じて私も少しだけ、腕の力を緩める。

「だって、友梨香さんには関係ないことじゃん……」

　知ってる、わかってる。そんなこと。この件に関して、私はめちゃめちゃ部外者だ。

「でも放っとけない……っ」
「だったら……」

　低いつぶやきと共に、突然腕に鋭い痛みが走った。

「……っ」

　息を詰める。麻人が私の腕をきつく握ったせいだ。そのまま強引に、力ずくで私の両腕を引き剥がし、振り向いた。

「だったら、友梨香さんがどうにかしてくれるんですか!?　あの人のビョーキ、治してくれるんですか!?」

　闇を切り裂く鋭い悲鳴。その剣幕に圧倒されて、何も言えなかった。

「友梨香さんに話したって、どうにもならないじゃん……っ！　母さんが好きな父さんは単身赴任で帰ってこないし、姉ちゃんは結婚して、まだ一歳にもなってない子供がいるんです。そんな状況で、どうしろっていうんですか!?」