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可愛いヒモの育て方。
第20章 好転

 そもそも部屋だって、麻人が掃除しろって言うから頑張ったのに。

「風呂もトイレもキッチンも、あ……、キッチンは今ちょっと汚れてるけど、ピッカピカに磨いたから! あとでちゃんとチェックしてよね!」
「はいはい」
「んで、合格だったら……」
「……なんすか?」

 そこまで勢いよく言いかけて、躊躇う。麻人の袖を引き、顔を寄せて小声で言った。

「……エッチ、しようね」

 麻人は一度大きく目を見開いたあと、文字通り大爆笑した。
 夕食を終え、食休みをしながら、私はずっと気になっていたことを尋ねた。

「お母さん、大丈夫?」
「はい、おかげさまで」

 麻人の様子は普段と変わらない。お母さんが病院に運ばれていた日のように、沈んでいる様子も、取り繕っている様子もない。そこに安堵を覚える。

「手首は大丈夫ですし、精神科のお医者さんにカウンセリングを受けました。姉ちゃんが父さんにも連絡してくれて。土日に帰ってきてました。父さんに会って、少し落ち着いて話もできてたから良かった。友梨香さんにも、ご迷惑をおかけしました」
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