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第21章 好きな人

「めっちゃいっぱい種類ある。すげー」

　冊子をぱらぱら捲りながら、麻人が感嘆の声をあげる。

「どれがいいですか？」

　私の隣に座り、私にも見せてこようとする麻人。いや、どれがいいって聞かれても！

「緊縛はしない！　ほどいてよこれ！」

　手首を振り、ジタバダ暴れてみても、麻人は完全スルー。

「あ、これなら知ってる！」
「え？」

　麻人はあるページを見せてきた。写真付きで載っている縛り方は、かの有名な『亀甲（きっこう）縛り』。

「私も知ってるけどっ」
「これでいっかー」
「よくないってば！」

　私の意見は何一つ聞き入れられないまま、話がどんどん進んでいく。

「写真だと複雑そうだけど、わりと簡単かも」
「あ、じゃあ私が縛る！　私が麻人を縛る！」
「却下」
「なんで!?」

　こっちの意見がバッサリと切り捨てられるまで、コンマ二秒ほど。速い！

「だって友梨香さん不器用じゃん。関節外されそうで怖い」

　そういえば、前に彩乃にも言われたような。不器用な私にそういうプレイはオススメしないと。

「麻人って器用なの？」
「友梨香さんよりは」

　いや、私と比べられても……。