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第21章 好きな人

　……少し気恥ずかしい。
　麻人の体が、私の上に覆い被さってきた。その胸もとを、私はそっと手のひらで撫でる。
　麻人は私の首や鎖骨、胸なんかに、順番に口付ていく。一度顔をあげ、今度は唇にキスをくれた。そうしながら手のひらで、私の体をなぞっていく。さっきみたいな意地悪なものではない、優しい愛撫だった。

「麻人」

　名前を呼んで、その体を抱きしめる。麻人の重みと体温が、私の全身を包み込む。温かくて心地よくて、満たされていくような気持ちになった。
　同時に、麻人への思いが溢れていく。今ならその言葉を口にすることに、なんの抵抗も躊躇いもなかった。

「ーー好きだよ」

　麻人を腕の中にすっぽりとおさめ、耳元に唇を寄せて囁いた。言葉にするとその気持ちは、心の内で何倍にも膨れ上がっていくような気がする。
　さらにきつく麻人を抱きしめる。この子をずっと、離したくないとさえ思えた。

「……やっと言ってくれた」
「言わせたくせに。意地悪。……返事」

　短い催促。ここまで言わせてOKしてくれなかったら、抱きついたまま一生離してやらないから。