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イヤよイヤよも好きのうち
第12章 かんさいじん


『きゃあぁっ…!』


めくれ上がるスカートを押さえつつ、腰を折って屈む。しばらく耐えると、風は狭い路地を吹き抜けて消えていった。


『えらい風やったな…』

その声に顔を上げると

『けど…めっちゃ綺麗やな?』

空を見上げる高峰さんは
舞い散る桜吹雪の中、微笑んでいた。

『………っ』

さっきの風が運んできた近くの桜。

淡く可憐な色合い…
ひらひらとゆっくりと…
音もなく躍るたくさんの花びら…
それはまるで、高峰さんを包む光のようで…


『キレイ…!』


眩しそうに細まった、その瞳。
弱くなびく前髪と鼻筋のとおった横顔。

あたしは生まれて初めて…
男の人を綺麗だと思いました。


『なんや、ついてんで…』


あたしを見た高峰さんはフッと笑って、長い手をこちらに伸ばしてきた。



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